労働条件と賃金 (労働基準法、労働組合法、民法)

   労働条件は、労働基準法で規定されています。
   これは、「人に値する生活を営むため、労働条件の基準は最低のものを規定しているから
   これより低下させてはならず、向上を図るように努めなければならない」とされています。

   ご自分の待遇を法律(最低限の基準)と照らし合わせてみて、状況を把握してみて頂きたいと思います。
   また、末尾には「おかしいな」と思った場合のヒントを載せました。

   厚生労働省発表の H19年7月分の「毎月勤労統計速報(7月分)」によると、前年同月を比較して、
   現金給与総額は、1.9%減(38万6446円 8ヶ月連続減少)、残業などの所定外給与は、0.2%減、
   常用雇用は1.6%増となっています。

   ※ここでは、特殊条件の労働(バス、タクシー、トラック等、客室乗務員等)や、日雇い労働者、船員、
   公務員は主題にしていません。

就業規則の変更 労働時間と休息時間 労働形態 36協定 休日 休憩 時間外、休日、深夜の割増賃金 年次有給休暇

過重労働に関して

「おかしいな」と思った時のヒント

参考


 (0) まず始めに

   以下のケースのうち、あなたの会社で当てはまるものがありますか?

    ・残業は多いが、賃金はちゃんと支払われている会社。
     これは、表面的には問題ないかもしれませんが、残業が多いことは、労働者の精神的、肉体的負担が
     多いのは確かで、改善指導されなければならない場合が多いと思われます。

    ・残業は多く、残業代は支払われない会社

    ・残業代は支払うが、月単位で支払われず、閑散期にまとめて支払う会社

    ・法改正の趣旨を、拡大解釈して従業員に従わせる経営者

    ・法律の知識を知らず、間違った労務管理をしている会社

   これらは、間違いなく問題があります。

    上記の内容で、「賃金はちゃんと」とはをもって、「ちゃんと」なのでしょう
    拡大解釈といっても、どの部分が「拡大解釈」なのでしょう。
    「間違った労務管理」とは、なにが間違っているのでしょうか。
    賃金が支払われない事実は、明確に「おかしい」と思いますが、上記の問いかけに関しては
    「基準」を知らないと、間違っている事する判らないではありませんか?

    労働基準法は、「労働条件は人として生活するのに値するもの」で最低限度の基準を
    規定しています。
    ですから事業者は、この最低限度の約束を守らなければいけません。「労働条件を低下させてはならなく、
    向上を図るように努めなければならない」とされています。

    知らないと、自分自身を守れません。主張できません。改善できません。
    訴えるにも即効性がありません。


   以下は、労働基準法の概要をご紹介します。
   この法律は、適用になる労働者と、適用除外される労働者がいますので以下(1)から読んで頂くことを
   お勧めします。

 (1) 基本原則
    この法律の原則や用語を定義しています(全ては割愛します)。

   ●公民権行使の保障
    労働者は、労働時間中に公民権(選挙権、国民投票等)を行使し、又は公の職務(議員、民事・刑事訴訟の
    証人等)を執行するために必要な時間を請求する事が出来、使用者はこれを拒むことは出来ません。
    ただし、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができます。

    ※公民としての権利とは
     公民に認められる国家又は公共団体の公務に参加する権利を言います。
     就業規則に「公民権履行の禁止」と記載される例が実際にあります。これは違法となります。

   ●適用事業
    以下をご覧になり、ご自分の働いている場所・条件が「適用」と判断できる場合は、以降全ての内容が
    有効です。

    労働基準法の適用を受けるものは、以下になります。
      ・全ての事業(日本企業の外国人労働者、外国人経営の事業 含む)
      ・国家公務員(一般職除く)
      ・地方公務員(一部適用しない)
      ・特定独立行政法人等(旧4現業)の職員(国家公務員)
      ・船員(基本原則、罰則のみ適用 ⇒船員法により適用)

      ※特定独立行政法人
       業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるもので、
       この役員及び職員は国家公務員の身分が与えられる。

      ※独立行政法人
       中央省庁から現業・サービス部門を切り離す目的でこの制度を規定した。
       特定独立行政法人との違いは、役員及び職員の身分の扱いが異なる。雇用保険が掛かるなど民間と
       同じ扱いになり、国家公務員が出向する際には退職扱いとなる(1997年〜 橋本内閣)。
       独立行政法人一覧
       同一覧(Wiki) (何て多いのだろう)

    適用されないものは、以下になります。
      ・外国にある、日本の商社、銀行等の支店。
      ・同居の親族のみ使用する事業および、家事使用人
      ・選挙事務所

      ※「同居の親族」とは6親等以内の血族、配偶者、3親等内の姻属を示す(民法725条)
      ※個人家庭による家事を事業として請負うものに雇われ、その指揮命令の下に当該家事を
        行うものは適用される。

    ●事業の単位と区分
      適用単位は、継続して行われる事業単位になります。経営上一体をなす支店や工場を総合した
      全事業をさすものではありません。
      ただし、場所が分散していても規模が著しく小さく、独立性のないものは、直近上位と一括されて
      1つの事業として扱われます。

      単位区分は民営化の動きにより、19現業から下図の15現業にまとめられました。

第1号 製造業 者の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、
破壊もしくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更もしくは伝導の
事業及び水道の事業を含む)
第2号 鉱業 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
第3号 建設業 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
第4号 運輸交通業 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
第5号 荷物取扱業 ドッグ、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
第6号 農林業 土地の耕作若しくは開墾又は植物の採物、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
第7号 畜水産業 動物の飼育又は水産動物の採穂若しくは養殖の事業その他の畜産,養蚕又は水産の事業
第8号 商業 物品の販売、配給、管理若しくは賃貸又は理容の事業
第9号 金融広告業 金融、保険、媒介、周施、集金、案内又は広告の事業
第10号映画、演劇業 映画の作成又は映写、演劇その他興行の事業
第11号通信業 郵便、信書便又は電気通信の事業
第12号教育研究業 教育、研究又は調査の事業
第13号保険衛生業 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
第14号背客娯楽業 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
第15号清掃と畜業 償却、清掃又は畜場の事業

   ※郵政事業はかつて国営企業でしたので、国家公務員法や公共企業体等働関係法(公法)、
    国営企業労働関係法などの適用を受けてきましたが、郵政労省は郵政事業庁、郵政公社を経て、
    07年10月から日本郵政株式会社としてスタートしました。今後は労組法、労基法適用となります。

    ※旧四現業の廃止まで
     かつて国営企業を総称する言葉としてかつて存在したが、分割・民営化の政府方針により、
     下記四現業は、「特定独立行政法人等」にまとめられ、労働基準法の対象から外れました。

     国有林野業(国営企業)
     日本郵政公社(国営公社)  (H15.4より)
     独立行政法人国立印刷局  (H15.4より)
     独立行政法人造幣局     (H15.4より)

     ※三公社五現業から、四現業まで(参考)
      国営企業を総称する言葉としてかつて存在した呼称。

      

    ●労働者
    職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用されるもので、賃金を支払われる者。
    具体的には、以下の2つの条件が満たされることにあります。

   (判断のポイント)
   ・労働提供の形態が使用者の指揮命令下の労働であること
   ・報酬(賃金)が労働に対する対償として支払われていること

   労働者に該当する
   ・法人の重役で業務執行権又は代表権を持たず、工場長、部長の職にある者(兼務 役員)
   ・労働組合の専従者
   ・新聞配達員
   ・共同経営事業の出資者(ただし使用従属関係ある場合のみ)もの

   労働者とみなされない者
   ・個人事業主
   ・法人、団体又は組合等の代表者又は執行機関たる者
   ・競輪選手
   ・芸能タレント
   ・受刑者
   ・労働委員会の委員
   ・同居の親族
   ・下請負人
   ・学生で実習等に従事しているもの
   ・インターンシップ

    ※インターンシップであっても、上記判断のポイントに該当すれば労働者になります。

    ※同居の親族でも、以下の全ての条件が揃えば労働者となります。
    @常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において作業に従事している者
    A事業主の指揮命令に従っている事が明確である事
    B就労の実態が他の労働者と同じであり賃金もこれに応じて支払われている事

    ●使用者
    事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために
    行為をする全ての者を示し、労働基準法の義務についての責任を負います。
    事業主とは、その事業の経営の主体をいい、個人企業にあってはその事業主個人、会社その他の
    法人組織の場合は「法人」そのものを言います。

    ・人事、給与、労務管理など労働に関する業務に関して権限を与えられている者

    ・移籍型出向の場合、使用者責任は出向先が負う。

    ・在籍型出向の場合、出向元と出向先間の取り決めによって決められた権限と責任に応じてそれぞれ
     出向元、出向先で負う。

    ・法令の規定により事業主等に申告等が義務付けられている場合において、事務代理の委任を受けた
     社会保険労務士がその怠慢により該当申請等を行わなかった場合、その社労士は、「使用者」や
     「代理人、使用人その他従業者」に該当し、責任を問われる。

    ・派遣労働の場合は、下記の責任をそれぞれ負う。
         派遣元は
         労働契約、賃金・割増し賃金、男女同一賃金、年次有給休暇、産前・産後休業、就業規則

         派遣先は
         労働時間、休憩・休日、公民権行使、育児時間

     ポイント
      派遣先の勝手な都合で、派遣当初の業務内容や労働時間について違った場合、当然
      派遣元に改善要求や賃金保障が出来るという事です。改善できなければ、派遣先に出勤せず
      派遣元に賃金保障を請求できるのです。
      賃金保障は、積極的に労働者に告げない会社(派遣元)もありますから、労働者自らが
      発言すべきでしょう。


  ●有期契約の退職の申し出
    有期労働契約によって使用されている労働者は、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日
    以降において、使用者に申し出て、いつでも退職することが出来る。
    ただし、以下に該当する者は除かれる。

     1)一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約の場合
     2)高度で専門的な知識を有する者及び満60歳以上の場合

 (2) 労働契約
    労働者の募集から始まり契約の締結、契約の終了までを範囲とするが、労働基準法では労働条件の
    明示義務、契約期間、解雇の「手続き的な規制」など、必要最低限の制約に留めています。

    ●法律違反の労働契約
    労働契約中、労働基準法に定める基準に達しない労働契約を定めている部分のみが無効になり、
    残りの部分は有効となる。無効となった部分は、最低基準を規定する労働基準法で定める基準に置き
    換えられる。

    効力の関係
    法令 ≧ 労働協約 ≧ 就業規則 ≧ 労働契約

    労使協定は、それを締結することによって免罪(罰を免れる)効果が与えられるが、民事的な権利義務関係
    に影響を及ぼすものではなく、上記の効力関係とは直接関係ありません。

   ●契約期間
   期間の定めの無いものを除き、一定の事業の完了に必要な期限を定めるものの他、3年(一定の
   契約は5年)を超える期間について締結してはなりません。
   3年を超えない契約の更新を繰り返す場合は、「期間の定めの無い」労働契約扱いになります。

   なお、期間を定めるメリットは、期間満了により労働契約が終了する事にあります。期間の定めのない
   場合は、解雇制限の適用を受けたり、解雇にあたって正当な理由が必要になるのです。

   (3年を超えることが出来る場合)
   契約の更新は出来ません。

    ・必要な期限を定めるもの
     その事業が有期的(期間が決められている)事業であることが、客観的に明らかであり、その事業が終期
     までの期間を定める契約であることが必要です。

    ・職業訓練の必要がある場合
     認定職業訓練を受ける労働者については、訓練機関の範囲内で3年を超える期間を定めることができる。

   (5年以内の期間を定めることが出来る場合)
   締結される労働契約の期間を5年とする事ができ、契約の更新もさらに5年以下の契約期間を定めることが
   できる。

    ・満60歳以上の労働者。

    ・専門的知識を有するものの契約期間
     専門的な知識、技術又は経験(専門的知識等)があって、高度のものとして以下の労働者。

専門的知識等を有するもの
博士等 博士課程修了者
有資格者 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、薬剤師、不動産鑑定士
弁理士、技術士、社会保険労務士、税理士
試験合格者 システムアナリスト、アクチュアリー
発明者など 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
技術者など 1)農林水産業の技術者、鉱工業の技術者、機会・電気技術者、建築・土木技術者、
  システムエンジニア、デザイナー     (年収、学歴、実務経験年数の規定あり)
2)システムコンサルタント            (年収、実務経験年数の規定あり)
国等により有する知識
が優れていると認識
されているもの

      ※アクチュアリー
       「日本アクチュアリー会の正会員になる」とほぼ同義である(もちろん、外国のアクチュアリー資格を
      取得することも可能である)。年金数理人や、保険計理人になるための条件の一つは、
      日本アクチュアリー会の正会員であることである。
      日本アクチュアリー会は日本で唯一のアクチュアリー団体であり、金融庁の指定法人である。
      アクチュアリーの育成・研修のほか、保険数理に関する調査研究を行い、日本の保険会社の
      責任準備金の計算基礎である標準死亡率の作成なども行う。 (Wikipedia より引用)

   ●労働条件の明示
    使用者は、労働者に対して賃金、労働時間その他のろうどう条件を表示しなければなりません。
    労働条件が明示できない事によって、労働者と使用者との紛争が増大すること未然に防止しする事を目的としています。

    明示すべき労働条件には、絶対的明示事項と、定めがある場合には必ず明示しなければならない
    相対的明示事項があります。

    労働条件を明示する時期は、労働契約の締結の際になります。

    絶対的明示事項
    ・労働契約の期間にかんする事項
    ・就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
    ・始業及び就業の時刻所定労働時間を越える労働の有無休憩時間休日、休暇並びに労働者を2組以上に
     分けて交替に就業される場合は、就業時転換に関する事項
    ・賃金退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)の決定計算及び支払いの方法
     賃金の締め切り及び支払い期間ならびに、昇給に関する事項
    ・退職に関する事項(解雇の事由も含む)

    ※締結した際には、必ず上記項目が記載されている事を確認してください。
    ※募集時点で、労働条件の明示は必要無いが、職業安定法(ハローワーク等)では明示義務があります。
    ※労働条件の締結に際して使用者が労働条件を明示しない場合であっても、
     労働契約自体は有効に成立する(30万円以下の罰金)。

     口約束だけで「労働条件」を明示しない使用者が存在します。
     気になる方は、口約束で終わる事を想定して、一度事前に労働基準監督署に相談するのをお勧めします。
     対処法の知識を得た後は、あなた自身を守る選択肢になるのです。


    相対的明示事項(定めがある場合には必ず明示しなければならない)
    


   ●解雇

    解雇に関する大原則
    使用者は、労働者を自由に解雇することはできない。
    客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用した
    ものとして、無効とする。

     整理解雇の妥当性は、以下全てを検討しなくてはならない。
     ・人員削減の必要性
     ・解雇回避努力の有無
     ・整理解雇基準・対象者選定の合理性
     ・手続きの妥当性

    解雇制限
    以下の条件があると、解雇そのものが制限されます。この期間に解雇したとしても、
    それは無効になります。

    ・業務上の負傷・疾病により療養のために休業する時期とその後(復帰)30日間
    ・産前産後休暇の規定に該当する労働者(女性)があらかじめ使用者に休暇を請求した場合

    解雇予告
    
    解雇予告の除外
    


 (3) 労働時間・休憩・休日
      業種によって、さまざまな労働形態があるために、法律では「始業、就業時刻」の1パタンのみ規定されて
      い場合(定型的労働時間制)や、変形労働時間制(1週間、1ヶ月、1年単位、フレックスタイム)、みなし
      労働時間制(事業所外労働、裁量労働))という制度によって対応しています。

   ●労働時間
      休息時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならなく、休息時間を除き、1日に8時間
      超えて労働させてはならない。

      ※ 昼休みに来客当番として待機させている場合には、その時間は労働時間となります(別途休息時間を
        与える必要あり)。
      ※ 就業時間外の「自由参加」による教育訓練等は、労働時間になりません
      ※ 定期路線トラック、坑内労働者等の休息時間の規定(考え方)は例外があります。
      ※ 商業、映画・演劇業(映画の製作は除く)、保健衛生業、接客娯楽業は、特例で上限1週間44時間です。

     ポイント
       ・労働時間とは、拘束時間から休息時間を引いたものと考えてください。
       ・あなたの職場の労働形態はどれにあたりますか? あなたに渡された書面や、就業規則で
       調べてください。

       ・時間制限が規定されているのに、残業が多い場合でも「違法にならない」方法があります。
       (サブロク協定というものです。後に解説します。)

   ●休日・休憩

   休憩
    休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れる事を保障
    している時間であって、その他の拘束時間は労働時間となります。

      ・労働時間が6時間を越える場合は、少なくとも45分、8時間を越える場合は少なくとも1時間
       休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。
      ・休憩時間は、一斉に与えなければならないが、業種あるいは、業務の形態によっては困難な場合が
       あるため、特定業種は除外されている。
      ・18歳未満の年少者は、例外は認められないので、前記年少者に対して一斉に与えない場合は、
       労使の書面協定が必要。

   休日
      使用者は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
      ただし、4週間を通じて、4日以上の休暇を与える場合は、その限りではない。
      休日とは、労働契約において労働義務のない日をいい、原則として1暦日を示し、午前0時から午後12時まで
      の24時間の休業をいい、単に連続24時間の休業は休日ではない(例外: 交代制の休日)。

      ※国民の休日は、義務付けているわけではない。
      ※ 出張中の休日は、その日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示
       が有る場合は、休日労働として取り扱わなくても差し支えない。

      休日の振替
       振替えるべき日をあらかじめ特定する事を示し、休日労働に対する割増賃金の支払いの必要は発生
       しない

       ※1ヶ月単位の変形労働時間制を採用していて、振替えにより1週間の法廷労働時間を超える時には、
        割増時間の支払いの必要、36協定の締結が必要となります。

      代休
       休日労働させた後にその代償措置として通常の労働費に労働義務を免除する事。
       休日労働した事は帳消しにならず、割増賃金の支払いが必要。

     ポイント
      ・「振替」と「代休」を間違って使っている場合があります。違いをよく理解してください。

   ●時間外・休日労働


    36協定(サブロク協定)
      労働基準法では、1週40時間、1日8時間の労働制・週休制を原則としているが、法36条の規定により、
      時間外・休日に関する労使協定(サブロク協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る事を要件として
      法廷労働時間を超える時間外労働、法定休日における労働を例外的に認めている

      しかし、この趣旨は、時間外・休日労働を無制限に認める訳ではなく、本来臨時的なものとして、必要最低限
      にとどめるべきもであり、労使がこのことを十分意識した上で締結することを期待している。

      ポイント
      ・時間外労働の延長限度の基準が、下表のように出ています。会社はなんらかの施策をしている
      はずです。
      ・残念ながら、協定違反に対する罰則はありません。




1週間 2週間 4週間 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 1年間
時間外の限度時間 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間
1年単位の変形労働時間制
(対象期間が3ヶ月を超えるものに限る)
14時間 25時間 40時間 42時間 75時間 110時間 320時間

         ※以下の業種は、上記の内容は適用しない。
           ・工作物の建設の事業
           ・自動車の運転の業務
           ・新技術、新商品の研究開発の業務
           ・季節的要因等により、事業活動もしくは業務量の移動が著しい等、行政が指定したもの

         ※労働時間の延長は、36協定によるものであるが、例外がある(2時間以上延長してはならない)。
           ・坑内労働
           ・健康上特に有害な業務。


   ●みなし労働時間
   

   ●特別な取り決め
   


 (4) 変形労働時間制
      各種類の概要を解説します。

   ●1ヶ月単位の変形労働時間制
           a) 適用可能条件:小売業、旅館、料理店、飲食店のいずれかで、常時使用する労働者30人未満
                       ※満18歳未満の年少者は適用できない。

           b) 趣旨      :日ごとの業務に著しい繁簡を生じる事が多く、かつその繁簡が定期的に定まって
                       いない場合に、1週間を単位として、一定の範囲内で就業規則その他これに
                       準じるものによりあらかじめ特定することなく、1日の労働時間を10時間まで
                     延長する
事を認める事により労働時間の効率的な配分を可能として、
                     全体で労働時間を短縮
しようとする。

           c) 時間外労働  :1日について、8時間を越える労働時間を定めた日にはその時間を超えた場合。
                       それ以外は、8時間を越え労働させた時間。
                       さらに、1週間で見て、前期時間を除き、40時間を越えた時間。

   ●フレックスタイム制
           a) 適用可能条件:特になし。
                       ※満18歳未満の年少者、一部の地方公務員(非現業の一般職)は適用できない。

           b) 趣旨      :1ヶ月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲で
                      各日の始業及び就業時刻を選択して働く事により、労働者がその生活と業務
                    との調和を図りながら効率的に働く事を可能
にし、労働時間の短縮しようと
                    いうものである


           c) 時間外労働  :清算期間(1ヶ月以内の期間)における、法定労働時間の総枠を超えた部分。

          ※フレックスの内容(対象労働者の範囲、清算期間、標準となる1日の労働時間、コアタイムを設ける
            時はコアタイムの開始及び終了の時刻等)を労使協定で決める必要がある。
            (自動更新の取り決めも可能だが、労使双方の合意が必要である)。

          ※総労働時間を超えて労働した時間分を、次の清算期間内の総労働時間の一部に充当するのは、
           違反です。

   ●1年単位の変形労働時間制

        

   ●1週間単位の非定型的変形労働時間制

        























 (5) 年次有給休暇

  年次有給休暇
      使用者は、その雇い入れから起算して、6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に
      対して継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければなりません。
      以降、1年ごとに同様に8割以上出勤した労働者に、以下の様に日数が付与されます。
      ただし、通常の労働者と比べて少ない労働者(1週間の所定労働時間が30時間未満である等の
      条件あり)は比例付与という方法によって、付与される日数が決められています。

                   <毎年一回も全労働日の8割未満の出勤が無かった場合の付与日数>

勤続年数 6ヶ月 1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月以上
付与日数 10 11 12 14 16 18 20
加算日数 +1日 +2日 +4日 +6日 +8日 +10日


             ※全労働日に含まれない日
                ・所定の休日に労働させた場合のその日
                ・使用者の都合による休業の日(向上一次休業時等)
                ・労働組合の争議行動(ストライキ)による、労務の提供が全くされなかった日

             ※出勤したものとみなす日
                ・業務上の傷病による療養のため休業した期間
                ・産前産後の女性が(8)の産前産後休暇をした機関
                ・育児・介護休業法による、休業した日
                ・年次有給休暇を取得した日

             ※当事者の合意で決める内容
                ・生理日に休暇を請求して、就業しなかった期間は、当事者の合意によって出勤した事に
                しても差し支えない。

      ※年次有給休暇の権利は2年間で時効によって消滅します。
      ※法廷日数を付与している場合は、その日数を買い上げることは差し支えない。
      ※ 年次有給休暇の賃金は、平均賃金、所定労働時間を労働した場合の通常の賃金、健康保険法の
       標準報酬日額に相当する額の3通りの方法が決められている。

      ポイント
       ・年次有給休暇は、1労働日を単位とするものであるから、半日単位で付与する義務はない
       (与えても差し支えない)。

       ・8割を満たさなかった場合は、次の付与される時期の有給休暇は0日となり、以降全労働日が
       8割に達してから加算日数が順次表の左から右へ増えてゆきます。

       ・使用者は、労働者の請求する有給休暇日の変更は、事業の正常な運営を妨げる場合に限り
        変更することができます。


 (6) 賃金

  時間外、休日、深夜の割増賃金

      特別の労働に対する労働者への補償を行うものであり、
      使用者に対しては、経済的負担を課す事によって、これらの労働を抑制する事を目的としていいます。

      ※36協定が必要です。
      ※36協定が無くても、非常時等の臨時の必要があった場合は、事前、事後に労働基準監督署に届け出
        をすればよく、割増賃金の支払い義務がある(非常時でない場合、で36協定違反でも、支払い義務は
        ある)

      ポイント
      ・フレックスタイム等の変形労働制の場合は、規定の時間を超えた場合が時間外になるので、
       深夜労働(午後10時〜午前5時まで)にかからず、その日の労働時間が法廷労働時間内であれば
       「時間外」ではない。
      ・時間外労働する時間が増してくると、心身に影響を与えます。「(11)過重労働に関して」を参照。

      割増率

事   例 割増率
時間外労働をさせた場合 2割5分以上
法定休日に労働させた場合 3割5分以上
深夜労働をさせた場合 2割5分以上
時間外労働が深夜の時間帯に及んだ場合 5割以上
法定休日労働が深夜の時間帯に及んだ場合 6割以上

          ※ 深夜業の時間帯が、所定労働時間内でも深夜労働に対する割増賃金を支払わなければならない。
          ※ 運輸交通業の事業に従事する労働者で、一昼夜交代勤務に就くものについて、夜間連続した
            睡眠時間を与えた場合は、それが深夜にわたる場合でも、深夜割増賃金を支払う義務はない。
          ※ 深夜労働が禁止されている年少者に、違法に深夜労働をさせた場合、罰せられ、割増賃金を支払う
          ※ 翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、割増賃金を支払えば違反とならない。
          ※ みなし労働時間制の場合は、この規定は除外される。

      ポイント
       ・徹夜明けで、通常勤務を続けた場合は、通常開始時間後はリセット(以降通常の勤務として扱う)
       しても構わない事になっています。

       ・管理職でも深夜業に労働した分は、深夜割増を支払う必要があります。

 (7)年少者
    「年少者」規定へ

 (8)妊産婦等

     

 (9) 就業規則
       あなたの会社は、就業規則がありますか?または、就業規則を簡単に閲覧できますか?
      まずは、自分の会社の規則を知ることをお勧めします。
      最近は、電子ーデータ管理されており、イントラネットで閲覧できる会社もあります。

   ●就業規則の作成・変更

       必要に応じて、内容の変更は出来ますが、労働基準監督署に報告義務がある会社は、
      労働組合(労働者の過半数で組織されている必要あり)、該当しない場合は、過半数を代表する
      労働者の代表者の意見を添付しなければなりません。

     ポイント
       ・同意書に関しては、代表者の意見書の添付が必要だが、内容は問われない(反対でも構わない)。
       ・「労働者の代表の意見」の場合、代表者の選出方法や認知が曖昧の場合がある。
        知らないうちに総務の一担当者が代表になっている場合があります。

   ●就業規則の記載事項と作成手続き
      

      ※就業規則は、事業所単位でパートタイム、臨時従業員の方が居る場合は、その方の人数も
       合計して、10人以上の労働者になる場合は、内容変更時も含めて、労働基準監督署への提出
       義務づけられています(労働基準監督署にて受理する時に、就業規則の内容に問題が無いか
       チェックされ、法令、労働協約に抵触するものは、変更を命ずる事が出来ます)。

      ※就業規則と同様に、労働基準法及び労働基準法に基づいて発する命令の要旨を、常時各
       作業場の見やすい場所に掲示し、又備え付ける等の方法によって労働者に周知させなければ
       ならない事になっています。
       上記の電子データ管理の場合は、電子機器の操作の権限があり、各労働者が必要な時に
       容易な方法で確認できる場合に、用件が満たされていると解釈します。

     ポイント
       ・就業規則を簡単に閲覧できますか?
       ・労働基準法についての概要を同様に閲覧できますか?
       ・いくら就業規則に記載されていても、下記(3)以降の内容より悪い内容は無効であり、
       労働協約、法律の順に優先されます。



  (9) 妊産婦等
      母性保護の規定は残しつつ、それ以外の規制は撤廃する方向性に進んだ。
      「女性」という名称項目も「妊産婦等」に改正。

    1 就業制限
     1-1) 坑内業務の就業制限(H19.4.1改正)
      ・使用者は、以下の女性を業務に就かせてはならない。
      a) 妊娠中の女性及び、坑内で行われる業務に「従事しない旨を使用者に申し出た」産後1年を経過しない
        女性は、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない。

      b)上記に該当しない18歳以上の女性は、坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務、
        その他の女性に有害な業務(詳細は 改正女性労基則1条に記載)に就かせてはならない。

      ※満18歳未満の女性は、年少者の規定により坑内労働が禁止されている。

     1-2)危険有害業務の就業制限
      ・妊娠中の女性および、産後1年を経過しない女性は、重量物を取り扱う業務、
       有害ガスを発散させる場所等に就かせてはならない(業務により、申告した時のみ就かせてはならない
       ものもある)

     2 母性保護の措置

      2-1)産前産後
        使用者は、6週間(多胎妊娠の場合、14週間)以内に集散する予定の女性が休業を請求した場合には、
        就業させてはならない。出産当日は、産前に含まれる。
        出産予定日が遅れた場合の出産当日は産前に含まれ、予定日から出産当日までの期間は、産前の
        休業期間に含まれます。

        出産は、妊娠4ヶ月以上(1ヶ月は28日として計算する。4ヶ月は85日)の分娩とし、死産も含まれる。

        産前の休業については請求する事が前提になっているが、産後の休業については、請求の有無に
        かかわらず、出産の日の翌日から、8週間について就業が禁止されている。ただし、産後6週間を経過
        した女性が請求し、医師が就業しても支障がないと認めた業務に就かせる事は差し支えない。

        ※休業中の賃金は、有給、無給いずれでもよく、労働協約、就業規則の定めるところである。
        ※ 休業中は、健康保険法により標準報酬日額の6割相当額が「出産手当金」として支給される。


      2-2) 妊産婦(妊娠中の女性、産後1年を経過しない女性)の就業制限

         ・変形労働時間制に対する措置
           1ヶ月単位、1年単位、1週間単位の変形労働時間制を採用しているところでは、特定の週または
           特定の日についても、法定労働時間を超えて労働させることはできない。

         ・非常災害、時間外労働に対する措置(本人の請求した場合に適用)
           非常災害により、臨時の必要がある場合、公務のために臨時の必要がある場合、36協定で締結
           されていても時間外及び、休日労働をさせてはならない。

         ・深夜業に対する措置(本人の請求した場合に適用)
           深夜業をさせてはならない。

     2-3) 育児時間
         生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回それぞれ少なくとも30分、その生児を育
         てるための時間を請求できます。

         ※請求に係る時間に、労働させる事は違反であるが、その時間を有給とするか無給にするかは、自由。

     2-4) 生理休暇
         生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、就業させてはならない。

         ※請求に係る時間に、労働させる事は違反であるが、その時間を有給とするか無給にするかは、自由。
         ※ 有給休暇とは性格が違うので、有給にて消化する事は良い事ではない。


 (10) その他


   ●寄宿舎
    

   ●災害補償
    


 (11)過重労働に関して

      毎日の時間外労働が積み重なってくると、だんだん心身への影響が出る可能背が強くなってきます。
      行政では、心臓疾患(心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤)や、脳血管疾患(脳内出血、
      くも膜下出血、脳梗塞、高血圧系脳症)との因果関係を調査し、過労死の認定基準を作成しました。

      ・発症前1ヶ月におおむね100時間を越える時間外労働が認められる場合、または、
       発症前2ヶ月ないし、6ヶ月間にわたって、1ヶ月あたり(平均して)80時間を越える
       時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関係性は強いと判断される。

      ・発症前1ヶ月ないし6ヶ月にわたって
        a)1ヶ月当たりおおむね、45時間を越える時間外労働が認められない場合は、業務との
        関連性が低く、
        b)1ヶ月当たりおおむね、45時間を越えて時間外労働時間がながくなるほど、業務と発症
        との関連性が徐々に強まるとはんだんされる。

      ・脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会」の検討結果(方針)について (H13.11.15発表)
      ・脳・心疾患の認定基準の改正について                        (H13.12.12発表)

       関連項目: 二次健康診断     (職場の法律、健康診断)
               労働者災害補償保険 (職場の法律、労災)

      ポイント
       ・過重労働をしない事には越した事はありませんが、やむ終えず、段々と積み重なり、過労と
       なる事が多いようです。自分を守る上でも、日ごろからご自分の勤怠情報は、
       入手しておきましょう。
上記の対象疾患に関して発症した場合の主張できる唯一の情報と
       なるからです。

  (12) おや? と思った場合

      以上読み進めてみて、やっぱり自分の会社はおかしいと思った場合は、末尾の参考機関等で調べるのも
      良いでしょう。
      解決への心づもりから、内容別問合せ先等より詳しく、現実的なアドバイスが載っています。
      本ホームページはこれだけの記載ですら、実は未だ書き足りない事がたくさんあるために、これだけでも
      実は、判断するには危険があります。


      調べ方は?
      1.総務関係の知り合いに、まず現状を訊いて確認してみる(改善を要求するのではなくて)。
      2.労働組合がある場合は、相談窓口等があると思うので、問合せしてみる(職場委員、職場代表も活用)。
      3.関連機関に問合せしてみる(無料、有料あり)
      4.労働基準監督署に相談する事ができます。

         ・あくまでも労働基準法に関連する内容でないと相談にのってもらえません。

         ・H10年10月1日より(法改正により)、労働基準監督署は比較的積極的に労働者と雇用主との
          トラブルについて働きかけをしてくれるようになりました(必要な助言、指導。ただし、手助けレベルであり
          最終的な解決はしてくれません)。

         ・労働基準法、労働安全衛生法に関して、各地域の事業所を監督する立場であり、必要に応じて
          労働基準監督官が事業所に立ち入って、法令違反の調査をして違反があれば、是正を求める事に
          なっています(是正勧告)。また、この立ち入りを臨検と呼びます。

         ・違反の罪に対しては、刑事訴訟法に規定される司法警察官の職務を行う事ができ、悪質な違反に
          対して送検手続きを行う事ができます。

         ・臨検を行う場合、労働基準監督官から申告者の名前が出る場合があります。あなたの名前が
          知られたことにより身に降りかかる危険性がある場合は、事前に監督官と氏名の公表はしない等を
          確認しておくのが良いと思います。
          また、匿名で労働基準監督署に通知する事もできますが、その内容に対して処置するか否か、
          処理される時期は労働基準監督署の都合となってしまう恐れがありますので、リスクを考えてください。

      5. 専門家である、社会保険労務士、弁護士に相談する方法もありますが、経費を考える必要があります。

      アクションは?
       ・感情的にならずに慎重に行いましょう。
       ・逆に社内いじめ、会社での居場所が無くなる危険性も考えられますので、慎重に行うべきです。
       ・アクションに伴う時間、経費、どこまでが譲れない内容なのかを、明確にする必要があります(現実論として)。


  参考 (選択、調査はあくまでもご自分の責任において行ってください)

      ・職場のトラブル解決方法 (労働安全情報センター)
      ・NPO法人 労働サポートセンター ( 事例、判例、相談)
      ・労働基準監督署

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