■ 年少者 (労働基準法、児童福祉法)

   少年、少女がアルバイトなどをする場合、彼ら、彼女らが将来を担ってゆく事を考えた場合
  法律で守る必要が出てきます。どのような事があるのでしょうか。

  日本でも、古くは子供は労働の担い手として、学校にも行かされず朝から晩まで働かされた時代
  がありました。
  過酷な労働や、売春、道徳的に問題のある仕事をする事で、子供達の体や、心が健全に育ちません。
  条文では明記されていませんが、子供の健やかな育成をはぐぐむ環境を守る事がこれら法律の
  趣旨と思います。


 (1)最低年齢の原則 (中学生まで)
    原則として、満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了していない児童を労働者として
    使用してはいけません。

    ポイント
     原則、中学(義務教育)を卒業するまでは、労働してはいけないという事です。

 (2)最低年齢の例外
    ただし、「非工業的事業」については、次の要件を全て満たす場合には、満15歳に達した日以降
    最初の3月31日が終了していない児童を労働者として使用する事を認めています。

     ・児童の健康及び福祉に有害ではなく、かつ、その労働が簡易なもの
     ・満13歳以上の児童であること
      映画の製作、または演劇の事業においては満13歳未満の児童についても認められる)
     ・児童の就業時間外に使用すること
     ・所轄労働基準監督署長の許可を受ける事。

    ポイント
     ・中学生でも新聞配達が出来るのは、上記の理由からです。
     ・また通達により、新聞配達員は「労働者」の定義に入ります。

 (3)児童の就労禁止の業務範囲 (労働基準法、児童福祉法)
    禁止業務は、以下の様になっています。

     ・公衆の娯楽を目的として曲馬または軽業を行う業務
     ・戸々について、又は道路その他これに順ずる場所において、歌謡、遊芸その他の演技を行う業務
     ・旅館、料理店、飲食店または娯楽場における業務(労働基準法、児童福祉法)
     ・エレベータの運転業務

 (4)年少者の証明書
    使用者は、満18歳に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書(住民票記載事項の
    証明で代替できます)を事業場に備え付けなければなりません。
    また、修学に差し支えない事を証明する、学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を
    事業上に備え付けなければなりません。

    ポイント
    ・年少者を保護する目的で、ちゃんと修学に支障が無く、フォロー体制が出来ていないと、
     労働させる事ができないという事です(校長、親 いずれも年少者にとっては保護する立場)。

 (5)未成年者の労働契約
    ・親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結していけません。
    ・親権者又は後見人、行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては
     将来に向かって、これを解除する事ができる。
    ・未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を
     代わって受け取ってはいけない。

    ポイント
     ・親などが、勝手に子供を働かせるための契約をしてはいけないという事です。
     ・後で、未成年者が不当な労働をしていると判明した場合、今後に関して取り消し
      (労働契約の解除)が出来ます。

 (6)労働時間及び休日
   満18歳の年少者に適用されない規定。

    ・変形労働時間制(1週間、1ヶ月、1年単位、フレックスタイム制)
    ・労使協定による時間外、休日労働
    ・特例あり

 (7)労働時間の制限 (中学生までの生徒 )
   満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了していない児童の労働時間の上限

   ・修学時間を通算して1週間について40時間
   ・修学時間を通算して、1日について7時間

   ※修学時間とは、当該日の授業開始時刻から同日の最終授業終了時刻までの時間から、
    休息時間(昼食時間も含む)を除いた時間を示します。


 (8)満15歳に達した日以降最初の3月31日以上から、満18歳未満のもの

   ・1週間のうち日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日を10時間まで
    延長できる。
   ・1ヶ月、1年単位の変形労働時間制において、1週間に48時間以内、1日について8時間を
    超えない範囲で労働させることができる。

 (9)深夜業(原則)
    ・満18歳未満の年少者については、午後10時から翌日の午前5時までの間は
    使用禁止。
    ・満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了していない児童(中学生まで)については、
    午後8時から翌日の午前5時までの間は使用禁止。

    ※上記2項において横浜地区に関して、特別区として午後10時まで許可される。
    最新の動向を参照

 (10)深夜業(例外)
    厚生労働大臣が必要と認める場合は、地域又は期間を限って

    ・満18歳未満の年少者については、午後11時から午前6時とする事ができる
    ・満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了していない児童については、
     午後9時から翌日の午前6時とすることができる。

    ・交替制による場合
     満16歳以上の男性については、一定期間ごとの交替制により深夜に労働させることができる。
    ・最該当臨時の必要がある場合
    ・農林水産業(自然条件に左右される事が多いため)
    ・保健衛生事業(事業の性質上深夜業が必要)
    ・電話交換の業務(電話の取次ぎ、注文受け付けも含む)

    ※上記理由より、芸能人、演劇家が、夜の公演で出演できない場合があります。
    ※しかし、昭和63年に労働基準局が「いわゆる芸能タレントの労働制について」という見解により、
     下記の1〜4に該当する場合は、労働基準法の対象外であるという解釈が出されました。
     その為、上記制限が適用されなくなります。

      1.当人の提供する歌唱、演技等が他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が
        重要な要素となっていること。
      2.当人に対する報酬は、稼働時間に応 じて定められるものではないこと。
      3.リハーサル出演時間等の、スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、
        プロダクション等との関係では時間 的に拘束されることはないこと。
      4.契約形態が雇用契約ではないこと。


 (11)最近の動向 

( ■義務教育期間中の児童

   2001年11月30日
   文化芸術振興基本法
が成立し、社団法人 日本演劇新興協会、横浜市が
   行政に強く働き掛け、横浜特別区域として満15歳に満たない子役の就業可能時間を、午後8時から
   午後10までに延長する事が決まった。

   2003年9月12日
   構造改革特別区域推進本部(政府)は、児童の福祉及び道徳を保護し、その心身の正常な発育を図る等の
   観点から、今後必要な措置をH16年度中に検討(全国規模の規制緩和:午後9時まで延長)する
   事になった。

   2004年11月16日
   開催された労働政策審議会が、厚生労働省の諮問案を妥当とする答申を行った結果、
   義務教育期間中の児童について、2005年1月1日以降、午後9時までの就労が認められる事になった。
   (現在は、午後8時から翌午前5時までは就労禁止。但し、事前に所轄監督署長の許可を受ける
   必要がある点は、従来と同じ。) 厚生労働省発表記事

   さらに、日本演劇振興会、劇団四季等は、午後10時までの延長を厚生労働大臣等に
   働きかけています。


  用語

   (児童福祉法)

   児童  満18歳未満のものを示す
   少年  小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者
   幼児  満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
   乳児  児童のうち、満1才に満たない者

   妊産婦   妊娠中又は出産後一年以内の女子をいう
   保護者   親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう

   (労働基準法)

   労働者  以下の条件を満たしている者
          ・事業又は、事業所に使用されている者
          ・使用者の指揮命令のもとで使用される者
          ・賃金を支払われる者

   妊娠   妊娠4ヶ月以上の状態
   妊産婦  妊娠中又は出産後一年以内の女子(文言は、条文と違っています)

   未成年者 20歳未満の者
   年少者  満18歳に満たない者
   児童    15歳の年度末


  参考

  社団法人  日本演劇興行協会   子役の就労時間延長について 
  使用する側の注意する点など、丁寧に注意すべき内容を解説しています。

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