健康診断 (働者害保障保険法、労働安全衛生法、派遣法)

  健康診断は、期間や診断内容が法律により規定されており、定期健康診断、雇い入れ時の
  健康診断、海外出張者の健康診断、特定業種で規定されている健康診断があります。
  また、予防の観点から、「二次健康診断」、「自発的健康診断」があります。

  最近の個人情報保護法(2005年4月より施行)により、これらの健康診断結果、保健指導の記録
  THPにおける健康測定結果等は、個人情報の中でも特に厳格に保護されるべきとの指針が
  出ています。

    (H16.9.6発表)
  ・ 「労働者の健康情報の保護に関する検討会」報告書について           

    (H16.10.29 基発1029009)
  ・ 「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」

    サラリーマンにとっては、身近な健康診断(事業者が行わせる義務があります)。
    しかし、派遣でお仕事をされている方の場合は、残念ながら義務項目ではありません
    実施する際は、ご自分の派遣会社(派遣元)から健康診断の指示を受けて行う事になります。

    ※参考(派遣、パート、アルバイト の法解釈)
    ただし、1週間の所定労働時間が、その事業所の同種の業務に従事する通常の労働者の
    1週間の所定労働時間の3/4未満であっても、概ね1/2以上である者については、健康診断
    を行うことが望ましい。

  ・定期健康診断 (労働安全衛生法、派遣法)

    1年に1回行う事が、義務づけられています。


     1) 会社で受診できるようになっている場合。
     2) 指定された巡回の診断バス等で行う場合。
     3) 指定された、病院等で受診をする事を指示される場合。
     4) 任意の病院、保健所で受診し、診断書を会社に提出する場合。

    必須検査項目が決まっており、年齢により省略できる検査があります。
    35歳時と、40歳以上の方は若い方と比べて検査項目が増え、心電図検査、血中脂質検査などが
    それに該当します。

    ※労災の「特別加入者」は、健康診断の対象者にはなりません(自主性にまかされている)。

    ※「仕事が終わってから受けに行く」とか、「診察料の負担は自費」という方もいらっしゃると思います。
     法律上では特に規定が無く、事業者さん(総務さん)が、厚生費としていかに社員へ支出できるか、
     という問題になります(特殊健康診断は労働時間とみなされなければなりません)。

    ※この法律は、最低限行うべき内容を規定していますので、これより良い対応(検査項目を増やす、
     年齢による、省略項目を減らす等)をしても問題なく、実践されている事業者さんもあります。


   二次健康診断 (労災法)
     上記の健康診断のうち、直近のもの(一次健康診断)で血圧検査、血液検査、その他の業務上の
     事由による脳血管疾患および、心臓疾患の発生にかかわる検査にて、いずれの項目にも
     異常の所見がある場合、請求に基づいて行うもので、過労死予防が大きな目的です(費用は
     かかりません)。しかし、利用者が低調なのが問題らしいです。

      一次健康診断にて、以下の全てに所見がある場合に、申請が出来ます。
       ・血圧検査(高血圧の場合に限る)
       ・血中脂質検査(高脂血漿の場合に限る)
       ・血糖検査(高血糖値の場合に限る)
       ・BMI(肥満度)の測定(肥満の場合に限る)

       ※「死の四十奏」と言われ、脳・心疾患を発症するリスクが非常に高いと言われています。
       ※労災の「特別加入者」は、二次健康診断対象者にはなりません。

      実施される内容は
        ・二次健康診断
        ・特定保険指導(栄養指導、運動指導、生活指導

     (1)請求方法など
        二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)に、必要事項を記入し、一次健康診断の
        結果を証明できる書類(結果の写し)を添付して、二次健康診断を受けようとする検診給付病院等を
        経由して、所轄都道府県労働局長に提出します。
        支給用件に合致していれば、自己負担なしで受けられます(指定医療機関でのみ受けられます)。

        ※請求時期は、1次健康診断実施日より3ヶ月以内です(やむ得ない場合の処置あり)。
        ※実施できる回数は、1年度(4月、新年度)に1回のみできます。

     (2)実施後
        実施後、3ヶ月以内に、二次健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出しましょう。
        法律で、提出後2ヶ月以内に医師から意見徴収を行わなければならない決まりになっていて、
        必要であると認める場合は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮。深夜業の回数の
        減少等の適切な措置を講しなければならない事になっています。


   ・自発的健康診断 (労働安全衛生法)

     深夜業従事者が自ら受ける健康診断を支援するのが目的で創設されました(H12 4/1 より)。
     常時使用される労働者であって、健康診断を受けた日前6ヶ月を平均して1ヶ月あたり4回以上
     深夜業に従事した方が対象となり、助成金により健康診断に要した費用の3/4(消費税含む)
     の額が助成されます(3/4 相当額が7500円を超える場合は、支給額は7500円になります)。

     2001年労働安全衛生基本調査結果速報によると、本制度を「知っている」とする労働者の割合は
     19.1%となっている。まだまだ啓蒙活動が必要ですね。

     ※自発的健康診断は、法廷健康診断への振り替えはできません。
     ※本助成金の診断範囲が決められています。

     (1)助成金の対象、条件

       1.常時使用される労働者(1週間の労働時間が、通常の労働者の所定労働時間の 3/4 以上の
         方も含みます)
       2.自発的健康診断を受診する日前6ヶ月の間に、1ヶ月当たり4回以上(過去6ヶ月で合計24回
         以上)深夜業に従事した方
       3.今年度この助成金の支給を受けた事がない方

       ※「深夜業とは」
         午後10時から、翌日の午前5時までの間における業務をいいます。勤務時間の一部でもこの
         時間帯にかかる場合は、「深夜の業務」があると判断します。

       ※労災保険非適用事業に係る労働者は対象となりません。


     (2)手続き

       1.助成金支援申込書(4枚複写)の、本人記入欄に、住所、氏名、振込み口座を記入

       2.事業者に、深夜業に従事していることの証明を依頼する(申請者の労働時間管理について
         責任を有する方ではれば良く、工場長、支店長、部長でも構いません)。

       3.上記、事業者証明を受けてから、1ヶ月以内に受診します。医療機関(健康診断機関)で
         健康診断を受け、その費用を支払います(健康保険は利用できません)。

       4.医療機関(健康診断機関)から、健康診断結果および、健康診断費用の支払い証明を受け
         取ります。
         ※助成対象項目にかかった費用のみ証明を受けてください

       5.事業者に健康診断結果を提出します。
         ※診断日より、3ヶ月過ぎると「自発的健康診断」としては無効になります(助成金はもらえない)。

       6.都道府県産業保険推進センターに申請書を提出する(上記同様、3ヶ月以内)。

       7.申請後、1〜2ヶ月で審査を行い、申請者に対して通知をするとともに、口座へ助成金を
         振り込まれる。


     (3)事業者の改善義務
        通常の健康診断と同様に、異常の所見があると判断された労働者に関しては、
        それから、2ヶ月以内に医師または歯科医師の意見を聴かなければならなく、必要と認める場合は、
        就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮。深夜業の回数の減少等の適切な措置を
        講しなければならない事になっています。


最近の報道から

平成19年
7月8日
(厚生労働省) メタボリックシンドロームに着目した特定健診の実施および特定保健指導が義務付けへ
 40歳以上の保険者を対象に従来の「身長、体重、視力及び聴力の検査」の項目に、腹囲を加え、
 「血中脂質検査」内容の「血清総コレステロール」を「低比重リポ蛋(たん)白コレステロール(LDLコレステ
 ロール)」に改める。
 この内容(省令)は、平成二十年四月一日から施行する。

◆平成17年
10月26日
(朝日新聞: Asahi.com) 残業月100時間越で医師面接。改正労安法が成立、労災法も強化
 過労死を防止するため、長時間働く従業員のメンタルへルス(心の健康)対策などを企業に促す
 改正労働安全衛生法が26日、参院本会議で可決。月100時間を越える残業をした従業員から
 申し出があった場合、企業に医師の面接指導を義務付ける。来年4月に施行される。
 また、単身赴任者の増加に配慮し、単身先と自宅の行き来を通勤災害の補償範囲に加えた
 改正労働者災害補償保険法(労災法)も成立した。

10月10日
(朝日新聞: Asahi.com) 40歳以上は全員健康診断 (健保、自治体に義務化へ)
  厚生労働省は、40歳以上の全国民が健康診断を受かられる体制づくりに乗り出す。
  サラリーマンの妻や専業主婦、自営業者など受診率が低い人たちも受けやすくし、生活習慣病の
  予備軍をみつけて、将来の医療費の伸びを抑える狙い。
  ただし、受診率ではなく生活習慣病発症率など「結果」できめるべき、費用対効果を疑問視する意見もある。

 6月17日
 (厚生労働省) 2004年度の「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況」を発表
  脳・心臓疾患の労災認定件数は294件(前年度比20件減少)で、このうち過労死に至ったのは150件
  (同8件減少)となっている。一方、仕事のストレスなどによる精神障害の労災認定件数は130件
  (同22件増加)で、このうち自殺(未遂含む)は45件にのぼる。 報道発表


 参考

  都道府県産業保険推進センター
  独立行政法人労働者健康福祉機構産業保険助成課


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