パートタイム の労働条件 (労働基準法、パートタイム労働法等)
労働条件って、どこまで保障されているのだろう??
そう思いながら、働いている方も多いかもしれません。
自らを守り、より良い環境で働けるように、したいものですね。
■ パートタイム労働者とは
法律では、「短時間労働者」という名称で定義されています。
一般に、パート、アルバイト、嘱託、臨時従業員、定時社員、準社員等、いろいろな呼び方が
あり、実際の仕事や処遇はさまざまだと思います。
パートタイム労働法では、その対象となる短時間労働者を、「1週間の所定労働時間が同じ
事業所の通常の労働者(正社員)よりも短い労働者」と定義されており、名称は問いません。
■労働契約
事業主と労働者の間の、賃金や労働条件などの取り決めを「労働契約といいます」
労働基準法では、以下の労働条件を明らかにした書面を交付するように事業主に義務付けています。
これは、パートタイム労働者でもかわりありません。
1)労働契約の期間に関すること、「期間の定め」の有無、ある場合はその期間
2)仕事をする場所、仕事の内容
3)仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換(交替
制勤務のローテーション等)など
4)賃金の決定、計算と支払いの方法、締め切りと支払いの時期
5)退職に関する事(解雇の事由を含む)
このほか、退職金、賞与などを支払うことになっている場合は、それらを明示する義務が
あります。
パートタイム労働法では、上記に併せて、
1)昇給
2)退職手当
3)賞与等
4)所定労働日以外の日の労働させる程度
などについて、文章(雇入れ通知書)で提示するように求めています。
※ポイント
労働契約としては口頭であっても両者が合意していれば成立しますが、「言った、言わない」
でトラブルの原因にもなりかねないので、できるだけ書面にしてもらうようにしましょう。
■就業規則 (パートタイム労働者の就業規則も必要です)
就業規則は労働基準法によって、パートタイム労働者を含め常時10人以上の労働者を雇用する事業主は
就業規則を作成し、事業所の見やすい場所に提示することが義務づけられています。
就業規則は、パートタイム労働者にも適用されますので、労働条件が通常の労働者と異なる場合は、事業主は
通常の労働者(正社員、プロパー)に就業規則に特別な規定を設けるか、パートタイム労働者専用の就業規則を
作らなければなりません。
パートタイム労働法に基づく指針では、パートタイム労働者に関することについて労働者の過半数を代表するものの
意見を聴くように努めるとする、としています。
賞与、退職金に関しては、賃金とは異なり、支給しなければならないという法的な義務付けはありません(正社員も
同等)。しかし、就業規則や退職金規定で賞与や、退職金を支給する旨の規定があるか、採用の際の約束がある
場合などは、受取ることができます。
パートタイム労働法に基づく指針では、賞与や退職金について、パートタイム労働者の就業の状態や、通常の労働者
(正社員、プロパ)との均衡等を考慮して定めるように求めています。
※ポイント
基本的に考え方は、正社員と同じです。しかし、パートタイム労働法の指針として「努める」、「求めている」という
文言にもある様に、拘束力がありません。上記の「規定があるか、約束があったか」が大きなポイントです。
■最低賃金 (パートタイム労働者でも最低賃金法は適用されます)
事業主は、最低賃金法に基づいて定められた地域別・産業別の最低金銀以上の
賃金を支払わなければなりません。これは、パート、アルバイトなどの雇用形態に関わらず、
また、性、国籍の区別なく、すべての労働者に適用されます。(最低賃金のページへ)
■時間外労働と、割り増し賃金 (1日実働8時間を越えれば、割増賃金が支払われます)
労働基準法の「1日8時間、1週40時間」労働の原則は、パートタイム労働者にも適用されます。
6時間〜8時間までの2時間分は通常の賃金を支払い場良いのですが、8時間を越える場合は、超えた分について
事業主は、通常の2割5分以上の割増賃金を支払わらなければなりません。
また、深夜(午後10時から午前5時まで)労働の場合は、2割5分以上、休日(1週間1回または、4週4回の法廷休日)
労働の場合は、3割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働と深夜労働が重なった場合はは、
5割以上、休日労働に深夜労働が重なった場合は、6割以上を支払わなければなりません。
なお、パートタイム労働法に基づく指針では、事業主はできるだけ所定労働事件を超え、または所定労働時間以外の
日に労働させないように努めるものとしています。
■年次有給休暇 (勤続6ヶ月を過ぎれば、年次有給休暇の付与対象となります)
定められた休日以外に、労働者の希望する日に有給で休めるのが年次有給休暇です。パートタイム労働者であっても、
6ヶ月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した場合は、年次有給休暇が付与されます。さらに雇用関係が
継続する場合は、6ヶ月を超えて勤務した1年ごとに、新たな救急休暇が付与されます。
所定労働時間や所定労働日数の少ないパートタイム労働者には、通常の労働者(正社員)とのバランスを取る為に、
「比例付与」の方法で以下の付与日数が決められています。
(1)週所定労働時間が30時間以上、週所定労働日数が5日以上、または所定労働日数が217日以上の場合
⇒通常労働者と同じ日数を与えることになっています。
(2)週所定労働時間が30時間未満の場合
⇒所定労働日数によって異なります。
短時間 労働者 の週所定労働 時 間 |
短時間 労働者 の週所 定労働 日 数 |
1年間の所 定労働日数 (週以外の 期間によっ て労働日数 を定めてい る場合) |
継続勤務期間に応じた年次有給休暇の日数 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月 |
7年 6ヶ月 |
8年 6ヶ月 |
9年 6ヶ月 以上 |
|||
30時間以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 | |||||
30時間 未満 |
5日以上 | 217日以上 | ||||||||||
4日 | 169日〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | ||||
3日 | 121日〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | ||||
2日 | 73日〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | ||||
1日 | 48日〜 72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
※ポイント
年次有給休暇の時効は付与された日から2年です。付与されてから1年以内に取得しなかった分は、
次の1年に限り取得することができます。ただし、退職日以降に取得することはできません。
■解雇、雇い止め
解雇とは、会社の意思労働契約を終了させることですが、パートタイム労働者であっても、会社は自由に解雇できる
訳ではありません。
・労働災害で療養のための休業の機関と、その後30日間に関する解雇
・産前産後休業中の期間と、その30日間に関する解雇
・女性の結婚、妊娠、出産、産休の取得を理由とする解雇
・育児・介護休業の申し出・取得を理由とする解雇
また、契約期間の有無により、それぞれ次の点が問題となります。
<期間の定めのない労働契約>
会社は、労働者を解雇する場合は、少なくとも30日以上前に予告しなければなりません。もし30日前に予告
出来ない場合は、予告手当てとして30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
また、解雇の予告をしても、「客観的に合理的な理由が無く社会通念上相当である」と認められない場合は、
解雇権の濫用として無効となり、会社は労働者を解雇することが出来ません。
何が解雇権の濫用にあたるかについては、個別の事例ごとに判断されます。
例えば、人員整理については次の要件満たすことが必要とされています。
・会社の維持、存続を図るために人員整理が必要であること
・希望退職の募集など、会社が解雇回避の努力をしていること
・人員整理基準が合理的・公平で、人選も合理的であること
・労働者に十分説明し、納得を得る努力をしたこと
<期間の定めのある労働契約(有期労働契約)>
期間の定めのある契約は、期間が満了した時点で契約も終了するのが原則です。しかし、機関の定めのある
契約を反復更新した後に、会社が契約期間の満了を理由として契約を終了させ、契約更新を拒むことが
あります(雇い止め)。雇い入れの日から起算して1年を超えて働いている労働者を雇い止めする場合には、
少なくとも契約期間の満了する日より30日以上前に予告することが必要です。
また、判例では、契約更新を繰り返してきている場合、契約内容などから総合的に判断して、実質的に期間の
定めのない労働契約と異ならないと、認められる場合には、「解雇」に準ずる扱いが必要であるとしています。
※ポイント
有期労働契約については、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにも関わらず、突然、
契約更新をせずに期間満了をもって退職させるなどの、雇い止めをめぐるトラブルが大きな問題と
なっています。
労働基準法では、「有期契約労働者に対し、契約の締結時に契約更新の有無、契約を更新する場合、
またはしない場合の判断の基準を明示しなければならない」という基準を示しています。
■退職
パートタイム労働者の労働契約は有期労働契約が多くみられます。
以下の形態を確認してみましょう。
1.期間の定めのない労働契約
民法では、いつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れをしてから2週間を過ぎると、契約は
終了するとしています。
また、就業規則や労働契約で、「1ヶ月前までに申し出ること」や、「退職願いを提出すること」などと
規定されている場合は、できるだけ規定の手続きに従った方が良いでしょう。
2.期間の定めのある労働契約(有期労働契約)
有期労働契約は職種により違いますが、上限が原則3年と定められており、期間が1年を超える
労働契約については、1年経過後は申し出ることにより、いつでも退職することができます。
期間が1年以内の契約で、就業規則や労働契約などで期間の途中でも手続きを踏めば退職できる事に
なっている場合には、その手続きにしたがって退職します。
就業規則などに決まりが無い場合に、仕様書が退職に応じなかったとしても、「止む終えない事由」があれば
期間途中でも退職することができます。
「止むを得ない事由」とは、労働者が仕事以外で病気をして長期間はたらけなくなってしまった場合など、
限定的に解釈されているので注意が必要です。
■一般健康診断
一定の要件を満たした方が対象ですが、残念なが事業者の義務にはなっていません。
健康診断の章
■労働災害
仕事で怪我をしたり病気になったりした場合は、通常の労働者と同様に取り扱われます。
休業中と、その後30日間は、原則として会社は労働者を解雇できません。