昔は良かった?制度
時代の変化により、法律は変わります。
労働者を守る立場の法律でも、過去のものより条件が悪くなる場合があります。
ただし、「良い」、「悪い」の判断は、人の立場によって分かれる部分もあり、異論もあるかと思いますが、
ここでは、はかせさんの観点から判断して時代の流れ(考え方の変化、政策の変化)により、過去、
どのような法律があったのか、ご紹介します。
(注意)本ページは、「労働者」の立場からみた内容を紹介しています。
他の視点からの改正も多々ありますが、割愛します。
■2007(平成19)年
・女性の坑内労働原則禁止を改め、労働規制枠が小さくなる (労働基準法改正 平成19.4.1 施行)
年少者と同様の弱者である女性の保護と、母性保護の視点から積極的な保護規定が設けられてきたが
それがかえって差別的な取扱いにつながっていったことから、母性保護の規定は残しつつ、それ以外の
規制は撤廃する方向性に進んだ。「女性」という名称項目も「妊産婦等」に改正。
女性の坑内労働の原則禁止を改め、女性の坑内労働(管理、監督業務)が行えるようになった。
(※作業員の業務は引き続き不可)
(旧)坑内労働の禁止
・使用者は、満18歳以上の女性を坑内で労働させてはならない。
ただし、臨時の必要で坑内で行われる、 「医師、看護師の業務」、「新聞、出版、放送番組版取材の
業務」、「自然科学に関する研究の業務」は、この限りでない。
(新)坑内業務の就業制限
・使用者は、以下の女性を業務に就かせてはならない。
1) 妊娠中の女性及び、坑内で行われる業務に「従事しない旨を使用者に申し出た」産後1年を経過しない
女性は、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない。
2)上記に該当しない18歳以上の女性は、坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務、
その他の女性に有害な業務(詳細は 改正女性労基則1条に記載)に就かせてはならない。
※満18歳未満の女性は、年少者の規定により坑内労働が禁止されている。
■2005(平成17)年
・演劇子役の就労可能時間の延長(平成17.1.1 施行) (平16厚労告407)
演劇の事業に使用される義務教育終了前の児童については、原則として午後8時から午前5時までの間は
使用してはならない。ただし、厚生労働大臣が必要と認める場合(演劇の事業に使用される義務教育終了前
の児童が演劇を行う業務に従事する場合)には、該当時間について、当分の間、午後9時から午後6時までと
することができる。
※はかせさん、個人的には非常に残念な内容です。
過去の経緯は、こちらをごらんください。 (職場の法知識⇒[年少者])
■2004(平成16)年
・有期労働契約の延長 (H15.7.4 改正、平成16.1.1 施行)
1) 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、契約期間の上限を、原則1年から
原則3年に延長した。
==> 上限3年の適用を受ける労働者については、暫定措置(法附則137条)が設けられた。
初日から、1年を経過した日以降においては、その使用者に申し出ることにより、
いつでも退職する事ができる。
2) 高度の専門的知識を有する労働者及び、60歳以上の労働者と有期労働契約を締結する場合の
契約期間の上限を3年から5年に延長した。
また、高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結された有期労働契約について、「当該労働者が
不足している事業場」。「業務に新たに就くものに限る」というる要件を撤廃し、労働契約の更新する場合にも、
当該労働者が引き続き高度の専門的知識を必要とする業務に就く限り、契約期間の上限は、3年から5年
となった。
・高度の専門的知識を有する労働者の対象業務の範囲の変更 (平成16.4.1 施行)
(H10.12.28厚労告153→ H14.2.13厚労告第21号 → H15.10.22厚労告356 )
「博士の学位を有するもので、実務経験2年以上の者」、「中小企業診断士」、「プロジェクトマネージャ試験
合格者」「アプリケーションエンジニア試験合格者」を削除し、いわゆる技術者等で一定の学歴、実務要件を
有する者の年収の要件を、575万円以上から1075万円以上に改正した。
改正後の範囲
・博士の学位を有するもの(海外で学位を取得したものも含まれる)
・次のいずれかの資格を有するもの
公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、1級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、
不動産鑑定士、技術士又は弁理士
・システムアナリスト試験または、アクチュアリーに関する資格試験に合格したもの
・次のいずれかに該当するもの
特許法に規定する特許発明者、意匠法に規定する登録意匠を創造したもの、種苗法に規定する登録品種を
育成したもの
・いわゆる技術者、システムエンジニア、デザイナー、システムコンサルタント(一定の実務経験を有するものに
限る)であって、労働契約の期間中に支払われることが確実に見込まれる賃金の1年あたりの額が、
1075万円を下回らないもの
・国、地方公共団体、公益法人その他これらに準じるものが認定したもの
・企画業務型裁量労働制 報告内容、決議等の緩和措置
1)企画業務型の対象となる事業所を「事業運営上の重要な決定が行われる事業上」に限定しないこととした。
(38条の4 第1項の改正)
2)労使委員会の決議の要件を「全員の合意による決議」から「5分の4以上の多数による議決による議決」
に緩和。(38条の4 第1項の改正)
3)労使委員会の委員の半数(労働者代表委員)について、「事業上の労働者の過半数の新任を得ている
こと」とする要件を廃止した。
(38条の4 第2項1号の改正)
4)労使委員会の設置の届け出を廃止した。
(38条の4 第2項2号の廃止)
5)使用者の行政官庁への定期報告の報告事項を、「苦情処理の実施状況、労使委員会の開催状況」の
報告は不要とした(条文の逆読み解釈)。
(38条の4第4項、則附則66条の2の改正)
6)企画業務型裁量労働制の決議の有効期間について、1年以内の期限に限ることとする暫定措置を
廃止した。
(則附則66条の2の改正)
※行政解釈により、当該決議の有効期間は、3年以内とすることが望ましい(平15.10.22基発1022001号)
・専門業務型裁量労働制
(法38条の3、則24条の2の2の改正)
■2003(平成15)年
・有期労働契約の期間の上限を現行1年から3年に延長(高度専門職及び60歳以上は5年)
(労働基準法 平成15年7月改正)
1年を超えて継続勤務している者について更新しない こととしようとする場合には、期間満了日の30日前までに
予告をしなければならないこと等の措置を講ずることとし、併せて、監督機関に必要な助言・指導権 限を付与した。
・ 介護補償の最高限度額、最低補償額が改正され、低くなりました。
(労働者災害補償保健法 則18条3の4 平成15年4.1施行)
介護(補償)給付の額の最高限度額、最低補償額の改正
改正前 改正後 限度額 常時介護 108,300円
随時介護 54,150円常時介護 106,100円
随時介護 53,050円保障額 常時介護 58,750円
随時介護 29,380円常時介護 57,580円
随時介護 28,790円
・健康保険、国民健康保険の一部負担金に関する改正が行われ、負担が増えました。
(健康保険法、国民健康保険法 平成14年10.1(一部 平成15.4.1)施行)
老人保健法の改正に関連し、一部負担金等の負担割合等の規定において、70歳以上の者の区分が新設された。
従来は、健康保険の被保険者、被扶養者で70歳以上のものは、老人医療の対象であったが、上記の改正により、
70歳以上75歳未満のものも、健康保険の療養の給付の対象になった。
【改正前】
区分 負担割合 被保険者 2割 被扶養者 入院 2割 外来 3割
※ 外来に関わる薬剤の一部
負担金の規定あり。
ただし、6歳未満の被扶養者 は免除されます。
【改正後】
区分 負担割合 1.原則 (以下2〜4以外)) 3割 2.3歳未満 2割 3.70歳未満(以下、4を除く) 1割 4.70歳以上の一定以上の所得者 2割
(参考)標準負担額の一部改正がありました(平14.10.1 施行)
健康保険法の標準負担額について、次のCの区分が新設された
区分 | 標準負担額 |
@原則 | 1日780円 |
A市長村民税の非課税者等 | 1日650円 |
BAの者で入任日数が90日を越える者 | 1日500円 |
C70歳以上の一定の低所得者(所得がない等) | 1日300円 |
・資格喪失後の継続給付に関する改正(平15.4.1施行)
療養の給付に係る一部負担金の割合は、「健康保険等の被用医療保険制度においては2割」、「退職後
加入することになる国民健康保険においては3割」であり、その負担割合に差があった。
今回の改正により、全ての医療保険制度において原則3割負担で統一された背景があり、
療養の給付等の継続給付は廃止された。